この道に入ったきっかけ
ドッグトレーナーになりたいと思ったきっかけは、愛犬の「もち」です。
私は幼いころからずっと動物と暮らしてきました。そしてオランダやアメリカとか海外の色んなところに住んでいました。
そして学生のときに日本に帰ってきたのですが、日本の環境にまったく馴染めず、ストレスで精神的にやられてしまったんです。
声も出なくなるし、どん底まで落ちて、生きていることが本当に辛かった。家族に支えられながら、なんとか生きていました。
そんな状態のなか、不思議なことにふと「犬を飼いたい」って思ったんです。
それまでも犬と暮らしてきてはいたんですけど、自分自身の犬が飼いたい、相棒がほしいと強く思いました。
ゴールデンレトリバーを飼おうと思って、ブリーダーさんのところに行ったりとか、キャリアチェンジ犬を待ったりしていました。
でも家族のアレルギーがわかって、毛が抜けやすいゴールデンレトリバーはやめることにしました。
そしてゴールデンドゥードルという犬種を見つけて、海外では盲導犬として仕事もしているということで、この犬に会いたいと思いました。
そしてブリーダーさんのところで出会ったのが「もち」です。
もちに会った瞬間・・、それまで何年もの間、笑うことを忘れていた私に、笑顔を取り戻させてくれたのが、もちでした。
もちを迎えて育てていくうちに、「元気になりたい」と強く思うようになりました。
もちと一緒に出かけたいという気持ちが、生きる源になって、病気を克服していきました。

オランダの街
もちは大型犬のパピーらしく、服はちぎる、眼鏡は壊す、など、本当に大変でした(笑)私が着ている服のフードを引っ張って、窒息させられたこともあります(笑)
なので、色んなトレーニングをやりました。
最初はオヤツを使うトレーニング、次はチョークチェーンを使ってジャークする訓練系のトレーニングをがっつりやりました。競技会にも出ました。
でもなにか違うなと思って、あるドッグトレーナーの方のところにたどり着きました。そして5~6年ほど、その人の元でトレーニングをやっていて、その道に進もうと仕事もしていました。
そしてもちにもトレーニングを行っていましたが、ある程度まではうまくいくのにあと一歩改善できないという状態になりました。
よく歩けるし、すごく言うことも聞くけど、でも犬への攻撃性もあって、それがあと一歩治らない。
そんな小さなモヤモヤが心の中で少しずつ増えていきました。
そして「その道のプロになる」と思っていたはずなのに、ある日それ以上に進めなくなりました。
そんなとき、テレビで、動物園の動物たちに採血をするためのハズバンダリートレーニングをしているのを観たんです。それを見て、こんな方法があるんだ、と驚きました。
そのことが自分の内側が変わるきっかけとなり、自然ともちにスリップリードを使うのをやめて、首輪に変えました。
もちはオヤツが大好きなので、他の犬に会ったときに、特定の音を出してオヤツをあげてみたらどうなるかなと思って、あげたりするようになりました。
そのときは何も知らなかったけれど、いま振り返ると、たまたま行動療法の拮抗条件付けをやったりしていました。
そのうちに田中雅織先生のInstagramを見つけ、コンサルテーションに申し込みました。
自分の犬でコンサルテーションを受けてみて、「こういうやり方があるんだ。私が求めていたものはこれじゃないのかな」と思いました。
ペットシッターの仕事をしていると、飼い主さんが見えない問題行動とか健康状態とかが見えてきます。
そういった経験もドッグトレーナーという仕事に生かせるし、同時にドッグトレーナーの知識がペットシッターの仕事に生かせるんじゃないかと思って、ドッグトレーナーになろうと改めて思いました。
前のドッグトレーナーさんのところでは決意まで至れませんでしたが、自分の犬で田中先生のコンサルテーションを受けてみて、「私は犬を救っていきたい。役立てられることがあるのなら、役立ちたい」と思いました。


私は「もち」に命を救われたと思っています。
だからもちに恩返しをするのはもちろんのこと、犬たちに恩返しがしたいという気持ちでいます。
うちでは保護犬の預かりもしていて、必ず1~2匹保護犬がいて、一緒に暮らしているんですけど、本当に、普通に可愛いんですよ(笑)
犬として本当に素晴らしい。
それをドッグトレーナーとしても、みなさんに広めていきたい。
私のちっぽけな力でもこのコたちのトレーニングに役立てることがあればいいなと思います。保護犬と暮らす楽しさも知ってもらいたいです。
それにはやっぱり総合的に、ドッグトレーナーとしてやっていくのがベストなんじゃないかと。
「もち」を育てる中で、犬育てでたくさん悩みました。もちとは力で闘ってきました。
「なんで言うこときかないんだ、このやろう」って思ったこともあります(笑)
でももう闘う必要はないし、ちょっとでも学べば、犬との世界は変わっていきます。
飼い主さんにはもっとシンプルに、犬との暮らしを楽しんでもらいたいし、犬たちが暮らしやすい世の中になったらいいなと思います。



記憶に残るコンサルは?
かつての私のように「このトレーニングでいいのかな」と思った人、なにかに気付いた人が、コンサルテーションを受けてくださることが嬉しいです。
ある飼い主さんから「私は犬と楽しく散歩をしたいはずだったのに、注意してばかりの散歩で楽しくなくなってしまった」と涙ながらにご相談いただきました。
散歩で歩いているときに犬を前に出させない、とか、犬が少しでも前に出たら許さないとか、私も経験がありますが、散歩中注意ばかりしていると、眉間に皺が寄るんですよね。
犬にとって散歩はとても大事なことなので、その大事なことが楽しくなくなるとか、飼い主さんが散歩に行くのが億劫になるとか、楽しく犬と散歩ができないトレーニングはするべきじゃないと思います。
散歩中、注意ばかりされるようなトレーニングをされてきた犬たちって、あちこちでストレスサインが出るんですよ。
スワレって言っただけで、舌先で鼻を舐めるとか、ストレスサインが出るんです。
たくさん匂い嗅ぎをしたり、アイコンタクトしたり、生き生きした顔で歩けない犬はかわいそうだなと思って、私もかつてはストレスサインを無視したトレーニングをやっていたので、申し訳なかったなと思います。

屋号『BUDDY DOG』の由来は?
BUDDYというのは相棒という意味です。
私自身、愛犬は家族でもあり、大事な相棒なんですよね。
飼い主さんと愛犬にも、よき相棒として生活してほしいと思います。
相棒という関係って、平等で同等で協力し合える、お互いに歩んでいけて、成長して、高めあっていける関係だと思うんです。
そんな関係性をぜひ結んでいただきたいなと思って、屋号につけました。
海外の人って、自身の犬とそういう関係性の方が多いんですよ。
「犬は犬」という考えなんですけど、相棒だからどこでも一緒に出掛けるし、連れていく。
それが普通、みたいな。
だからこそ犬と関係性をしっかり結んでいく、というのを見てきているので、日本の飼い主さんと犬が、よき相棒として関係を築いていけたらと思っています。

自分を一言で言うならどんなドッグトレーナー?
明るくて親しみやすいトレーナーになりたいなと思っています。先生、っていう感じじゃなくて、「みっしー」って呼んでもらえるような(笑)
犬の問題行動を抱えて、悩んで、泣いて、苦しんで、っていう飼い主さんをたくさん見てきました。私自身もそうでした。だからこそ、あえて笑顔でいたい。大変な場面だからこそ、余裕を持って、笑いにするっていうか。
実際にみなさんがどういう風に捉えてくださっているかは分からないですけど(笑)、そういうのを大事にしていきたいと思っています。


理想の犬との暮らしは?
一緒に山に行ったり、海でSupをしたり、泳がせに行ったり、車中泊で出かけたり、犬と行動を共にするのが大好きです。
実は私、本当はインドアな人間だったんですよ(笑)
犬によってアウトドア派に変わったというか、犬と一緒にアウトドアを楽しむのが好きになりました。
もちはスタンダードプードルとゴールデンレトリバーの血が入っているので、泳ぐのが大好きで、私自身も海が好きなので、夏は海や川に行ったりとか、休みの日は犬と一緒に自然を楽しむ、そういう暮らしを今後ともしていきたいです。
アウトドアはもちろんですが、仕事も犬と一緒にしていて、手伝ってもらうこともあります。
犬主体の生活をしている私にとっては、犬と何かをするっていうのが欠かせません。
犬たちに協力してもらって、私も犬たちに協力する。お互いに共に歩んでいける暮らしが理想です。


ドッグトレーナーとはどんな仕事だと思う?
客観的に見ると、犬の問題行動を解決する存在かなと思います。
これは理想ですけど、犬のトレーニングをもっとハードルを低く、当たり前のものにしたい。
いまやっているトレーニングの方法が、当たり前に受け入れられる世の中になっていってほしいなと思います。
トレーニングを受けるということが、いまはまだハードルが高いものだと思います。
申し込むのにちょっと躊躇するっていうか、なにか問題行動が起こってからトレーナーに頼もうというのが、いまの普通なんですけど、ドッグトレーナーがもっともっと気軽な相談相手みたいになっていくといいなと思っています。
今後もペットシッターの仕事を続けていきたいのは、実はそこにあって。
シッティングのとき、最初カウンセリングを行うのですが、そのときに飼い主さんが困っていることをポロリポロリと話してくださるんです。
飼い主さんにとってペットシッターは身近な存在っていうか、自分の家に入ってきて、自分の生活も見られて、自分の愛犬を任せるわけですから、そういう存在にならないといけないんですよね。
ペットシッターとドッグトレーニングの両方の仕事をしてきて感じるのは、犬の飼い主さんも猫の飼い主さんも、ペットシッターのほうが話しやすいみたいなんです。
あと、シッティングの仕事で犬たちを見ていると、問題行動が出ているのに、飼い主さんがその状況を分かっていないことも多い。
私はペットシッターとしての入口があるので、そこからでも、もっと気軽にトレーニングを受けてもらえるようになってほしいと思います。

ドッグトレーナー,ペットシッターとしての夢は?
ひとりひとり、一匹一匹と、誠実に向き合うことで、その人たちの暮らしがよりよくなって、笑顔になること、かな。
私、あまり大きな夢がないんですよ(笑)大きな事務所を構えたいとか、セミナーやりたいとか。
目の前のことにひとつひとつ誠実に向き合っていくことがきっかけとなって、飼い主さんたちの意識が少しでも高くなればいいなと思っています。
私がやっている保護活動は、捨てられた犬を預かって里親に繋げるという、いわば「出口」です。
動物社会の底上げをしていきたいと思っているので、大元の蛇口を閉めるには、人々の意識をあげること、飼い主さんの意識をさらにあげること、犬を飼っていない人に向けても発信していく必要があります。
そして結果として、捨てられる犬を減らして、保護犬を減らすことを目標にしていかなければいけないと思っています。
これは私自身が保護活動に携わっているからこそ、いま見えていることでもあります。
私が所属している保護団体はシェルターを持っていません。
各家庭で預かって、一緒に暮らして、トレーニングして、里子に出す、ということをしています。それは小さな力です。救える犬に限りがあるんですよね。
でもそれはある意味プラスだとも思っていて、シェルターだとしっかりトレーニングされていないとかで、「やっぱり飼えない」と戻ってきたり、逃がしてしまったり、といったケースを山のように見てきました。
保護犬を減らすことも大事ですが、保護団体の底上げもものすごく必要なことです。
そのためにはドッグトレーナーがもっと保護犬たちに携わっていければと思います。
ドッグトレーナーだからこそ保護犬に携われると思うんですよね、その技術があるから。
いまの犬の業界を変えることも大事だけど、まずは飼い主さんたちをひとりひとりでも変えていくということが大事なんじゃないかなと思います。
保護活動もしながら、ドッグトレーナーとして、ペットシッターとして、私にしかできない役目を、ブレずに、ちゃんと果たして、全うしていきたいと思います。