Cafe & Dog's Garden
HOUSE VILLAGE
オーナー 中村美穂
鹿児島県出身
ドッグトレーナーになるべく勉強中
愛犬は元保護犬のウィリー。迎えたばかりの頃は様々な人工的なものを怖がっていたが、ウィリーのペースに合わせて、無理をせず、ゆっくり社会化をしていった。いまはお店の看板犬として、穏やかに暮らしている。
HOUSE VILLAGEを作った経緯
鹿児島市内から車で30分くらい離れた郊外にあります。周りはお茶畑に囲まれています。
いまから10年前に「犬と人が共生できるというのが分かる場所になったらいいな」と思って作りました。
私はずっと、犬を飼っている人と犬を飼っていない人が交わる場所がないなと思っていました。
鹿児島って、散歩中に犬のおしっこやうんちをそのまま放置したりと、まだ田舎なんですよね。
散歩したりお出かけしたりするときのマナーの向上というか、犬が飼う人の知識を向上させる場所が必要だと思いました。
そうすれば、周りに「犬を飼っている人って、こんなにちゃんとしているんだね」ということをわかってもらえるし、そうなったららいいなという思いがありました。
ここは犬と犬が自由にノーリードで遊べる施設として作りました。
そしてそこにプラス、カフェがあると、そこでのマナーも学べます。
うちのような、犬とおでかけできるところが鹿児島って全然ないんですよ。
以前いくつあったんですけど、バタバタっと続けてクローズしてしまったんです。
というのも、やはり利用する飼い主さんたちのマナーの悪さがあったからなんです。
犬が排泄しても片づけず、床にそのまま放置してあるとか、看板犬が他の犬に噛みついたとか。
それでクローズしてしまって、うちだけが残りました。
「開店に向けて、仕事をしながら休みの日に自分でできる事はリノベーションしました。なので、重機も運転してます笑」
ちなみにここはドッグカフェではないんです。ドッグカフェと言ってしまうと、犬連れの人しか来なくなるんですよね。
私は犬を飼っている人と犬を飼っていない人が、同じ空間で同じ時間を過ごしてほしいと思っているので、「ドッグカフェではないです。犬同伴OKのカフェです」と言っています。
海外のカフェとかってそうですよね。ドッグカフェと書いていなくても、犬連れで行けるし。
そういうお店を増やしたいなと思ってて。
犬を連れていない人も来てくれて、マナーよく利用している犬連れの人を見て、「へぇ!犬連れて、こんな風に楽しめるんだ。犬と過ごせるんだ」と思ってもらえるように、そしてそれを発信していきたくて作ったお店です。
HOUSE VILLAGE
ここを作った10年前はいまみたいにSNSも普及していなかったので、東京など都会との温度差がすごくありました。
大阪に住んでいる人がここに来られたとき、「鹿児島は5年くらい遅れている」と言っていました。
確かに鹿児島って閉鎖的な地域でもあるので、初めてのものに対して慎重になるというか、警戒するというか、すぐ飛びつくという感じはないんですよね。
犬とおでかけしたり、ドッグランに行ったりする、ということも認知されていませんでしたし。
だからオープン当初は「犬と犬をノーリードで遊ばせたらケンカする!」「こんなことして大丈夫?!」「こわい!」とか言われました。
近所の人には「あ、ここにおしっことうんちをさせに来ればいいんだね」「犬をドッグランに離して、外出してきてもいい?」とか言われたりしました。
なので、最初のうちは、しつけがきちんとできていて、自分の犬をコントロールできる飼い主さんしか来なかったです。
あとは、東京に住んでいる人が書いているブログとかを読んで、ドッグカフェというものを知っている人が、「ドッグカフェって都会にしかないと思ってたけど、鹿児島にもあったんだ」と来てくれたり。
そのうちSNSが普及して充実していくと共に、都会と同じ情報を得られるようになって、「犬を飼ったらドッグランに連れていく」「一緒におでかけしたい、ドッグランに行きたいから犬を飼う」という風潮になって、ドッグランに連れてくる人が増えました。
「オープン時はANDYとアヒルのfullとjoeが居ました。ANDYは、神対応が有名で今でも皆さんから慕われております。未熟な私に足りない部分を埋め合わせてくれた大きな存在の犬でした」
一時期、「うちは姥捨て山か?」というくらい、問題犬が来るようになりました。
他のドッグランで失敗したという犬が続々とやってきて。
私、犬たちがうまく遊べるように、ドッグランでの犬のコントロールをしたりしていたんですね。で、そういうのをお客さんが見ていたり、またお客さんにも説明したりしていたんですよ。
そうしたらお客さんが、「ドッグランで失敗した」という知り合いとかに、「HOUSE VILLAGEに行けば大丈夫だよ」って話すわけなんですね。
それで、ドッグランでうまく遊べないという犬がたくさん来るようになりまして。
で、いま思うと、そんな状況で、自分でもよくやっていたなと。
でも不思議なことに私、ドッグランの中に入ると、極めて冷静で、落ち着いていたんですよ。
いまはボディランゲージなど、きちんと勉強して対応しています。
お客様には最初に細かく聞き取りもして、まずは犬の状況を把握してから、ドッグランに入れるようにしています。
ドッグランに入ってみて、犬に負担がかかりそうなときは、飼い主さんには、犬を無理させてはいけないことを分かりやすくお伝えするようにしています。
犬を他の犬と遊ばせたいという気持ちはわかります。せっかく来たんだし、仲良く遊んでほしいですよね。
でも、それは飼い主さん側の気持ちです。
犬がそれを望んでいないのであれば、それを尊重するべきだし、遊びたくないとボディランゲージで示しているのなら、今日は帰るという選択も必要です。
『HOUSE VILLAGE 』の由来は?
ここの土地の持ち主の名前を英語にして繋げたのが、HOUSE VILLAGEです。
字面もいいし、響きもいいし、お店の雰囲気にも合っているし、と思って付けました。
この土地を貸してもらったことに、感謝とリスペクトの想いも込めたのもあります。
理想の犬との暮らしは?
ドッグトレーナーに依頼したけど改善できなかった、噛むようになってしまったという犬が、連続してお店に来ることがありました。
そんな飼い主さんたちの悩みを聞いて、「え?トレーナーさんに任せたら良くなるものじゃないの?なにが起こっているんだろう」と、色々と調べ始めました。
私はいまドッグトレーナーになるべく勉強中なのですが、ホント、犬の問題行動は人が作っているんですよね。
私たち人間が変なことをしているから、こじらせてしまう。で、変なことをしていまうのは、知識不足だからなんです。
野生動物とか、犬じゃない動物を手懐けようとすると、相手の動物目線になって「私、怖くないよ」という態度になると思うんです。
でも、犬になるととたんに、それをしなくなっちゃう。
懐いてあたりまえ、噛まなくてあたりまえ、と思っているから、無理矢理なことをして、それで噛まれて、「噛まれた!」「この犬、噛む!」みたいな。
犬に噛ませるようなことをやってしまって、犬が噛んだら、「この犬は噛むから問題犬だ」と言う。
犬は人とは違う動物だという意識をもって、犬のことを知ることが大事だと思います。
「こういうことをされるのが嫌なんだ」ということをもっと知れば、変なしつけもしなくて済むし、もっとお互いが短い期間で信頼関係を築いて暮らしていけると思うんです。
そして、ふと目をやると、そこに犬がいて、一緒に暮らしていることを実感する。
それが理想かなと思います。
結局犬がわんわん吠えるから、犬を嫌いになってしまう人もいるし、嫌いな人はもっと嫌いになるじゃないですか。
人と犬がリラックスして暮らしている、そんな姿が近くにあれば、もっと理解してもらえると思うんです。
犬を飼っている人は「犬と一緒にいろんなところに行きたい」「犬と一緒に入らせてほしい」「泊まらせてほしい」という要望があると思います。
周りに「犬がいても大丈夫なんだね」と思ってもらえるように、まずはこちらがそういった姿を示していくことが大事かなと思います。
今後やりたいこと、目指していることは?
これは私自身が感じていることなのですが、「こんな風に犬と関われば、こんなに心も安定する」ということを、愛犬家のみなさんに伝えていきたいです。
犬を間違った観点から見ないで、動物目線で見た福祉というものにたくさんの人が着目してもらえたら、捨てられる犬やパピーミルも減ったり、ペットショップで安易に犬を買おうという人も減ると思うんですよ。
衝動買いで飼うのではなく、もっと命を大切に考えて、きちんと準備して、自分の生活も整えてから、犬を迎えよう、となると思うんです。
飼ったあとに気付くことが多くて、また飼ったあとに後悔されている人もたくさん見ますから。
お店にはたくさんのお客様がいらっしゃいます。そこには飼い主さんのリアルな声があります。
何気ない雑談のなかで、気軽に、愛犬のことを話してくださる。
その会話のなかで、なにかに気付いて帰ってくださるお客様もおられます。
犬のことで困ったらドッグトレーナーに相談すると思うんですけど、そこに至っていない、または犬の問題にまだ気づいていない方に向けて発信していけるのは、こういう場所なのかなと思います。