この道に入ったきっかけ
高校生のときに、知らない犬が住み着いたんです。窓を開けたら、車庫のところに犬がいて、飼い主はみつかったんですけど、いらないということで、うちの犬になりました。
実家があるところって、北海道のド田舎なんですよ。信号はないし、トイレは汲み取り式だし。野良犬に追いかけられて噛まれたこともあったので、犬はあまり好きじゃありませんでした。
でも飼い始めたら、かわいいなって思って。それで犬に興味を持ちました。
社会人になって三年程、全く別の仕事をしていたのですが、犬関係の仕事に就きたいと思い、専門学校に行きました。
本当は僕、動物看護師になりたかったんですよ。
でも男性で動物看護師で食べていくのって難しいんじゃないかと、専門学校の先生に言われたんです。
じゃあ他にはどんな仕事があるんだろうと調べて、警察犬の訓練士っていう仕事があることが分かり、トレーナーを養成する専門学校に行き、JKCの訓練士の資格を取りました。
当時の犬の業界って、訓練士が主流の時代だったと思うんですね。なので、JKCの資格を取ることが目標というか、自信にも繋がるということで、先生に推薦してもらった形です。
でも、実はその時から「なぜ吠えている犬にジャークしないといけないんだろう」「噛みつくとか吠えるとか困っているのに、なぜ訓練の大会で優勝を目指そうとするのか意味が分からない」と思っていました。
でもそれしかやり方がわからなかったし、インターネットも普及していなかったので調べようがなく、「ザ・カルチャークラッシュ」っていう本を見つけられたぐらいで。
いまみたいに行動学が主流ではなくて、特に北海道は遅れているので、迷いながらもやっていたという感じです。

「僕を育ててくれたいまは亡き愛犬たち。リードでショックを与える時代に犠牲になりつつも犬を教えてくれました。毎日仏壇に向かって懺悔してます」


僕はずっと専門学校で仕事をしていました。
専門学校を卒業したあと、そのまま専門学校のアシスタントになり、一緒に働いていた先生に付いて、主に大会に向けて練習をしていました。ですが、その専門学校が閉校になりまして。
その後、知り合いから声がかかって、別の専門学校に勤めることになりました。そこでは授業を持っていたものの、主に学校の運営をやっていました。
やりたいこととは違うと思う日々の中、別の知り合いから声がかかり、いまの職場に転職することになりました。
実は北海道から東京に出てくるのは嫌でした(笑)いまも北海道に帰りたくて仕方がない(笑)なぜならこっちの夏は暑すぎて地獄だから(笑)
でもこっちにいるほうが勉強もできますしね。とりあえず僕、ビヘイビアリストになるまでは帰れないです。


2019年、ヴィベケ・リーセ(デンマークのドッグトレーナー、アニマルビヘイビアリスト)の認定ドッグトレーナーの資格を取るべく、学び始めました。
ただコロナの影響で、途中でヴィベケが日本に来れなくなってしまったんです。
どうしようと思っていたところに、友人から田中雅織先生のセミナーが鹿児島であるから行ってみないか、と言われて。
前から田中先生のYouTube「Doggy Station」は観ていて、「この人、なんか食ってるし、口悪いけどすげぇな!」とずっと思ってたんですよ(笑)
で、鹿児島に飛びました。鹿児島で実際に田中先生に会ったときは、「あ、先生だ!ほんとにいるんだ!」って思いました(笑)
「Doggy Station」もいいなと思っていましたけど、やっぱり生で聞いたら、全然知らないことをたくさん教えてもらえたので、この人の元で学びたいと思い、トレーナーコースに申し込んで、認定ドッグトレーナーになりました。
コースを振り返って思うのは、あんなに教えてもらえることってないと思うんですよ。自分の知らなかったことを、納得できるっていうか、腑に落ちることをたくさん教えてもらって。
あとここがすごく大きなところなんですけど、ドッグトレーナーで生きていくのって、正直無理じゃないかなって思ってたんです。
でもそれを先生は体現しているじゃないですか。実力と知識があれば、こうやって生きていくこともできる。だからまずは目指すべきじゃないかなと思いました。


記憶に残るコンサルは?
コンサルテーション歴は長いです。
そして穴を開けられたことばっかりです(笑)
昔って「力でねじ伏せなさい」っていうやり方だから、それをやっていろんな大型犬たちに、腕に穴を開けられてきました。
食器をとったら怒るとか、リードを持っただけで噛むとか、犬が向かってくるのを、力で押さえて屈服させるということをやってきました。
でもやりながら、これでいいのかと疑問を感じていました。
噛みついてくるセントバーナードのコンサルテーションもやってましたけど、僕が力でねじ伏せられても、飼い主さんが力のない女性や子供だったら、それってできないじゃないですか。
訓練士はできるけど、飼い主さんができないなんて、意味ないんじゃないかと思っていました。
飼い主さんができるっていうことがやっぱり重要ですよね。
い ずれ付けたい屋号は?
僕、できれば独立したくないんですよ(笑)
うちの親が個人営業で、大変そうなのを見て育ったので、僕はできれば会社の中でやっていきたいと。
前に会社の社長に「うちの会社でできることをまずやるべきでは」「問題を治す人は増えてきているので、それはそっちに任せて、問題が出ないように社会化をするのが、うちの会社でやるべきことではないか」と話をしました。
蛇口を閉めないと、いくら治す人がいたって仕方ないじゃないですか。
社会性を持つ犬を育てるのが、ここでやるべきことなんじゃないかと。
それで一度話は進んだんですけど、諸々の事情とかがあって話がストップしてしまいました。
僕は、個人事業主だとできないことを、やっていかないといけないんじゃないかなと思っていて。
ペットショップで売られている犬たちの社会化をしていって、不幸じゃない犬にしていかないといけないと思うんです。
本当はペットショップなんてない方がいい。でもそんなに簡単に、すぐに無くならないと思うので、だったらいまやれることをやろうと。
会社での話は一旦ストップしてしまいましたが、社長が変わると会社の方針も変わったりするので、チャンスはどこかで来ると思っています。
いまは売られている犬たちの社会化をやっていきつつ、それを会社全体でやっていけるようにしたいと考えています。

自分を一言で言うならどんなドッグトレーナー?
オヤツおじさん、です(笑)
パピーパーティ、パピークラス、幼稚園と、パピーがメインの仕事なんですけど、パピーのコたちはみんな「米田大好き」で帰っていくっていう感じです(笑)
あとは、厳しいことをやったことがあるからこそ、いまは優しいっていう感じですかね。
理想の犬との暮らしは?
いま自分の生活が理想に近いのかなと思っています。
うちの犬たちは家でフリーで好き勝手やってますし、休みの日は一緒にあちこち出かけたりとかしてますし、それが理想なのかなと。
飼い主さんに対しては「もうちょっと犬となにかしようよ」って思いますよね。
散歩に行くことを伝えると、忙しくて行けないって言ったりとか。都合のいい道具みたいな人が多くて、だったらオモチャ買えばいいんじゃないって思います(笑)
本当に理想を言ったら、庭があって、走れて、いつでも出入り出来て、休みの日とかは広大なところで走らせてあげる。
やっぱり北海道がいいのかな(笑)

ドッグトレーナーとはどんな仕事だと思う?
犬に対して、人間との生活する中での怖いものをなくしてあげられる存在。
病院で働いていて思ったんですけど、犬に好かれる仕事だなと。
獣医師、動物看護師、たくさんいるんですけど、みんな言うんですよ、「犬や猫が好きでこの仕事を選んだのに、嫌われる」って。
僕はオヤツおじさんだから、僕に会ったときは、みんな喜んでくれるので(笑)

ドッグトレーナーとしての夢は?
社会化をしっかりやっていって、「うちのコ、困っているんです」と相談してくる人をなくしたい。
だから、さっきの話になりますけど、会社で社会化ができるような体制にしたい。
仕組みを変えていきたいです。
うちの会社自体は生体販売はしていないんです。商業施設の中に、テナントで入っているペットショップが生体販売をしているんです。
前に社長から社員に対して「そのペットショップが入っていることをどう思う?」「生体販売をしていることをどう思う?」と聞かれて、生体販売はブリーダーがやるべきなんじゃないかという話になったんですよ。
みんな、「ペットショップを無くすっていうのはすぐに難しいかもしれないけど、いいか悪いかって聞かれたら、よくないよね」っていう認識なんです。
全部ブリーダーでうまくいくかどうかは僕には分かりません。ただ早いうちに親から引き離すとかはないだろうし、迎えたらすぐパピーパーティをするとか、そういう仕組み作りをしたいです。
会社でさっさとやって、業界のパイオニアになっちゃえばいいのにって思うんですけど(笑)